エンプラ技術連合会
 
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エンプラとは
 
●概論
1-1 はじめに

  人類は、主として使用する材料に応じて、石器時代、青銅器時代、鉄器時代と文明を開花させてきた。プラスチックがこの世に現れたのは、20世紀初めのベークライトに端を発している。その後の発展は目覚ましく、日本の生産量はついに1500万トンに迫り、容積換算で鉄のそれに拮抗するまでとなり、我々の生活に無くてはならないものになっている。
  現代は、まさにプラスチックの時代ともいえるであろう。



1-2 エンプラの位置付け

  各種プラスチックの分類表を表1-1に示す。プラスチックは、大別して2種類に分類される。すなわち、熱を加えると流動し、成形が可能となる熱可塑性樹脂も、汎用プラスチックとエンプラに分類される。
  耐熱性が100℃以上あり、強度が50MPa以上、曲げ弾性率が2.4GPa以上あるプラスチックをエンプラとして、より耐熱性の低い汎用プラスチックと区別している。
  耐熱性がさらに高く、150℃以上の高温でも長期間使用できるものを特殊エンプラまたはスーパーエンプラとする。



プラスチックの分類

  また、各樹脂の持つ結晶構造の有無により結晶性樹脂と非晶性樹脂に分けられる。広義の意味では、耐熱性熱硬化性樹脂もエンプラと呼ばれるが、ここでは、上記の耐熱性熱可塑性樹脂を中心に述べる。なお、超耐熱性エンプラの一部に熱硬化タイプのものも存在する。
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1-3 エンプラの定義

  エンプラの定義として、ここでは「構造用及び機械部材に適合している高性能プラスチックで、主に工業用途に使用されるもので、耐熱性が100℃以上のもの」とする。
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1-4 各種エンプラの紹介と概括的物性比較

  エンジニアリングプラスチックという言葉が初めて登場したのは、1960年にアメリカのデュポン社が「金属に代わるプラスチック」と銘打ってポリアセタールホモポリマー(POM)を商品化した時である。そして、従来繊維用途が主体だったポリアミドがエンプラ用途にも使用され始めた。その後、ポリアセタールコポリマー、ポリカーボネート(PC)、変性ポリフェニレンエーテル(変性PPE)、そして1970年にポリブチレンテレフタレート(PBT)が開発された。この5種類の樹脂は、特殊なものを除き、比較的安価であることも幸いして順調に需要が伸び、全プラスチック生産量の6%以上に達した。
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1-5 汎用エンプラの市場動向

  以下に汎用エンプラの特徴・市場動向を紹介する。

ポリアミド(PA)
  ポリアミドは、その化学構造の違いで各種あるが、ここでは全般的なことを述べる。
  ポリアミドは、機械的性質、特に耐衝撃性に優れた結晶性樹脂である。また、耐摩擦・摩耗性、耐薬品性(強酸、フェノールを除く)、耐油性、ガスバリヤー性等に優れている。融点が高く、構造によって吸水性が高いことも特徴である。吸水により寸法変化が大きく、機械的強度は低下するが、柔軟性、耐衝撃性は増加する。
  前述のように一部のポリアミドは、吸水性が高いので、成形時および製品設計の際は、注意を要する。
  主な用途は、自動車・車輌分野、電気・電子分野、機械分野等の射出成形分野およびフィルム、モノフィラメント等の押出し成形分野、その他である。

ポリカーボネート(PC)
  PCは、非晶性樹脂で、汎用エンプラ中唯一の透明樹脂である。成形収縮率が小さく、寸法精度が良好であり、吸水率が小さいので寸法安定性が良好である。強度、特に耐衝撃性が非常に高く、クリープが小さい。また、電気特性も非常に良好である。しかし、耐薬品性は良好でなく、ストレスクラックを起こしやすい。
  PCはエステル結合を有しているため、一定量以上の水分を残したままで加熱成形すると、加水分解を起こし、物性低下等を引き起こすので、使用に先立って予備乾燥が必要である。主な用途では、電気・電子分野が最大で、ついで一般機械(カメラ部品等)が続いている。最近は、光学特性を生かしてCD、MD等のディスクが大きなマーケットとなっている。また、自動車・車輌分野でも使用量が増加し、これに続いている。さらに、シート分野もかなりの比率を占めている。

ポリアセタール(POM)
  バランスの取れた機械的性質を持つ結晶性樹脂で、特に耐疲労性に極めて優れる。耐摩擦・摩耗性、耐薬品性、耐クリープ性、寸法安定性に優れ、吸水性も少ない。しかし、分子中に酸素を多く含んでいるので、難燃性の付与は至難であり、耐候性は良くない。POMの主力用途は、日本が得意とする電気・電子分野および自動車分野である。特に前者では、DVDを中心とした家電製品、複写機等の生産増にともないエンプラの伸びが顕著であり、POMがその主力を占め、最近の需要増を支えている。

ポリブチレンテレフタレート(PBT)
  PBTは、汎用エンプラ中最も新しい樹脂である。強靭で、剛性も高く、耐熱性、耐熱老化性(高温でも良好な機械的性質を保持)の優れた結晶性樹脂である。また、電気特性も広い温度範囲で良好で、吸水性も小さく、耐候性、耐薬品性も優れたバランスの取れた樹脂である。難燃化も容易で電子用途に向いている。
  PCと同様に分子内にエステル結合を持つので、使用前の予備乾燥が必要である。
  主な用途は、電気・電子分野が半分以上を占め、更に自動車分野を含めると80%を越す。

ふっ素樹脂(FR)
  分子中にふっ素を含有する樹脂で、PTFE、PFA、FEP、ETFE、PVDF等10数種類あり特異な性質を持っている。
  その特長は、一言で多機能、高機能といえる。耐熱性、耐寒性、耐薬品性、耐候性が極めて優れている上、非粘着性、低摩擦・高周波特性等ユニークな性質を持つ。一般に、ふっ素の含有率が高い程性質が優れる。
  主な用途は、電気・電子分野、耐薬品性分野、非粘着分野、摺動材分野等であり、広い分野に用途が拡大している。

変性ポリフェニレンエーテル(変性PPE)
  変性PPEは、非晶性樹脂で、PPEとスチレン系樹脂のポリマーアロイが中心である。変性PPEの特徴は、広い温度範囲で機械的性質(剛性、耐衝撃性、耐疲労性)が安定していることである。電気特性も優れている。比重、吸水率が汎用エンプラ中最小であり、耐熱水性にも優れる。成形収縮率が小さいので、寸法安定性、寸法精度に優れている。耐熱性材料としても種々のグレードがある。耐薬品性では、酸、アルカリには侵されないが、芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化水素には侵される。
  主な用途は、電気・電子分野、OA機器分野が多く、自動車分野と続く。最近の変性PPEの需要を支えたのは、OA機器、例えば複写機、ワープロ、ファックス、およびパソコン等のハウジングへの大幅採用があげられる。

ガラス繊維強化ポリエチレンテレフタレート(GF-PET)
  PETは、従来、合成繊維、フィルム用途が主体であったが、二軸延伸ブローボトルおよびエンプラとしてのGF-PETの射出成形用途の応用が盛んである。
  GF-PETは、結晶化速度が遅く成形性に問題があったため、その優れた物性の割には需要が小さかった。しかし、結晶化速度改良グレードが開発されてからは、成形性が著しく改良され、樹脂そのものが持つ非常に優れた耐熱性、耐薬品性、電気特性、耐候性を生かした用途開発が急速に進んだ。なお、PCと同様に分子内にエステル結合を持つので、使用前の予備乾燥が必要である。
  主な用途は、電気・電子分野および自動車・車輌分野である。
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1-6 特殊エンプラ

  特殊エンプラは、エンプラの中でもコストは高く、汎用エンプラ程市場規模は大きくないが、汎用エンプラより耐熱性が高く、その他ユニークな特徴を持つ物である。以下に順次これを紹介する。

ポリフェニレンサルファイド(PPS)
  PPSは、結晶性樹脂で非常に耐熱性が高く(連続使用温度240℃程度)、機械的強度、剛性、難燃性、耐薬品性、電気特性および寸法安定性等が優れている樹脂である。
  近年、その優れた特徴を生かし急速に市場を拡大しており、次の汎用エンプラといわれている。
  主な用途は、電気・電子部品、家電部品、自動車部品、機械部品(ケミカルポンプ等)である。

ポリエステルエラストマー(TPC,旧称TPEE)
  TPCは、加硫ゴムと同様なゴム弾性を有し、加熱することによって溶融・流動するので一般の熱可塑性プラスチックと同様の成形加工が可能である。TPCは、熱可塑性エラストマー(TPE)の中で最も融点が高く、また機械的性質も優れている。また、低温特性に優れ、温度変化による弾性率変化が少ないことから、高機能材料として独自の市場を形成している。
  主な用途として、自動車、機械、電線及び電気・電子分野等多岐にわたっている。

ポリアリレート(PAR)
  PARは、基本的には透明性の非晶性樹脂で、耐熱性(Tg195℃)、耐紫外線性(SAE規格はノンコートで合格・紫外線バリヤー性がある)、耐衝撃性に特徴がある。他に回復曲げ弾性に優れるなどユニークな性質も合わせ持っている。
  現在は、純粋なものよりアロイやコンポジット系が主力となっており、耐熱ハイフロータイプの自動車灯具部品、高寸法精度フィラータイプの精密機械部品、耐薬品性アミドアロイの電子部品など幅広い用途に適性を持っている。

液晶ポリマー(LCP)
  LCPは溶融時に液晶性を示す樹脂で、その優れた高剛性、高強度、成形寸法精度、寸法安定性に注目され各社が上市している。耐熱レベルにより、タイプT,U,V、に分類されている。また、分子構造により、全芳香族系と半芳香族系に分類でき、全芳香族系は特に耐熱性に優れ、半芳香族系は薄肉流動性に優れている。
  主な用途は、電気・電子部品、摺動部品である。

ポリスルホン(PSU)
  PSUは、琥珀色透明の非晶性樹脂である。耐熱性(連続使用温度160℃程度)、耐加水分解性に優れ、高温でも酸、アルカリ、熱水に対して安定である。また、耐クリープ性、低温特性、電気特性に優れている。
  主な用途は、電気・電子分野、医療用機器分野、精密機器分野、食品工業用機器分野、自動車分野等である。

ポリエーテルスルホン(PESU)
  PESは、琥珀色透明の非晶性樹脂である。耐熱性(連続使用温度180℃程度)、耐加水分解性、難燃性に優れ、寸法安定性が良好である。また、高温での耐性に優れ、特に180℃までの耐クリープ性は、熱可塑性樹脂中最高である。耐薬品性も良好で、耐ストレスクラック性は、非晶性樹脂中最も優れている。
  主な用途は、電気・電子分野、熱水分野、医療工業用機器分野、自動車分野等である。

ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)
  PEEKは、従来にない特性を備えた結晶性樹脂である。特長としては、熱可塑性樹脂中最高レベルの耐熱性(連続使用温度240℃)、耐熱変形性(GF30%強化グレードの荷重撓み温度が300℃)を有し、高い難燃性と同時に燃焼時の発煙や腐食性ガスの発生が極めて少ない。耐熱水性(200℃のスチーム中で連続使用可能)、耐放射線性、耐薬品性も非常に良好である。
  主な用途としては、電線被覆、射出成形品、その他がある。

ポリエーテルイミド(PEI)
  PEIは、琥珀色透明な非晶性樹脂であり、優れた耐熱性と機械的強度を持つイミド結合と良好な加工性を示すエーテル結合が組み合わされたものである。その特徴は、優れた耐熱性(連続使用温度170℃)、機械特性、難燃性、電気特性、環境特性を持ち、燃焼時の発煙量も少ない。
  主な用途は、電気・電子部品、自動車部品、機械部品、航空機部品、その他である。

ポリアミドイミド(PAI)
  PAIは、非晶性樹脂であり、優れた耐熱性と機械的強度を持つイミド結合と良好な加工性、強靭性を示すアミド結合が組み合わされたものである。その特徴は、耐熱性(特に耐衝撃性)、耐疲労性、難燃性、摩擦・摩耗特性、耐薬品性、耐ストレスクラック性に優れていることである。また、電気特性も良好である。
  PAIの主な用途は、電気・電子部品、産業機械、事務機、自動車部品、その他である。

ポリイミド(PI)
  PIは、熱硬化性の耐熱性樹脂で、市販されている有機高分子中最高の耐熱性を有するため、着実に用途開発が進んでいる。PIは、数多くの会社で種々の化学構造のものが開発されている。その特徴は、耐熱性(連続使用温度250℃以上)、難燃性、強度特性、寸法安定性に卓越した性能を有することである。
  主な用途は、電気・電子部品、機械部品、自動車部品等である。
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